©三浦興一
神戸生まれ。チェロを故井上頼豊、安田謙一郎ほか諸氏に、指揮を尾高忠明、秋山和慶に師事。第48回日本音楽コンクール第1位、第27回海外派遣コンクール特別表彰。84年文化庁在外研修員としてオランダのデン・ハーグ王立音楽院に留学、アンナー・ビルスマに師事する。
86年にパリで行われた第1回バロック・チェロ・コンクールでは2、3位なしの第1位を獲得。85年から93年まで、フランス・ブリュッヘン指揮の「18世紀オーケストラ」に在籍し、同時に86年から2001年まで シギスヴァルト・クイケン指揮の「ラ・プティット・バンド」のメンバー、92年からは首席奏者・ソリストと通奏低音奏者して活躍した。鈴木雅明の主宰する「バッハ・コレギウム・ ジャパン」では1990年の創立以来通奏低音奏者を務めている。
ヨーロッパ各地、イスラエル、マカオ、オーストラリア等で演奏する他ヨーロッパ各地の講習会・アムステルダム古楽アカデミーの講師を務め、94年に新設されたブリュッセル王立音楽院バロック・ チェロ科に教授として招聘され、2000年に日本へ帰国するまで務めた。91年9月の《バッハ/無伴奏チェロ組曲ツアー(15回公演)》は各地で大好評を博し、同年度の村松賞大賞を受賞。99年より2008年まで水戸芸術館の専属クァルテット「ミト・デラルコ」のメンバーとして活動した。
録音では、上記2オーケストラによる多数の録音に参加。ジェミニアーニ、ボッケリーニのソナタ集、フランスの バロック・ソナタ、C.P.E.バッハの協奏曲集、L.レオの協奏曲集などの他、数多くの室内楽の通奏低音奏者として共演。95年、日本人としては初めてのオリジナル楽器による《バッハ/無伴奏チェロ組曲全曲》を録音し(DHM/現ソニー)、平成7年度文化庁芸術作品賞を受賞した。05年春には 新録音をリリース(レコード芸術誌特選)。以降同レーベルで日本人初の専属アーティストとして 《シューベルト/アルペジオーネ・ソナタ》《ベートーヴェン/チェロ作品全集》《ロマンス》(ピアノ故小島芳子)などのCDを発表し、ラ・プティット・バンドとの《ハイドン/チェロ協奏曲集》では1998年に第36回レコード・アカデミー賞(協奏曲部門)を、また2000年にはベートーヴェンの初期作品のCDでフランスのディアパゾン金賞を受賞した。平井千絵との「メンデルスゾーン:チェロとピアノのための作品集」で06年文化庁芸術祭優秀賞受賞。08年秋には同じく平井千絵と「ショパン・チェロ作品集」をリリースした。バッハ・コレギウム・ジャパンによる殆ど全ての録音で通奏低音を務める。
帰国後、2001年に古典派を専門とするオーケストラ・リベラ・クラシカを結成し、ハイドンを中心としたプログラムで年に2〜3回の公演を行う。鈴木自身のレーベル《アルテ・デラルコ》よりそのコンサートのライヴ録音その他を続々とリリース。同レーベルにはD.ガブリエッリ・チェロ作品全集、ヴィヴァルディ・チェロ・ソナタ全集、ボッケリーニの弦楽五重奏(以上レコード芸術誌特選)、ハイドンのフルート・トリオとモーツァルトのフルート・クァルテット(フルート: 菅きよみ)、コレッリのリコーダー・ソナタ集(Rec./ダン・ラウリン、チェンバロ/上尾直毅、レコード芸術誌特選)、スタンリー・ホッホランドと若松夏美、成田寛とのピアノ・トリオ、クァルテットなど多くの室内楽も含まれ、既に40枚近くを数える。
指揮活動も活発になりつつあり、ポーランドのバロック・オーケストラ《アルテ・ディ・スォナトーリ》やベトナム国立交響楽団、シドニーの《オーストラリアン・ブランデンブルク・オーケストラ》等の客演指揮に招かれたほか、日本では名古屋フィルハーモニー、山形交響楽団への客演指揮とチェロ独奏も好評を博し、2013年4月より山形交響楽団の首席客演指揮者に就任。
室内楽奏者としては様々なジャンルで活躍し、自身が企画する「鈴木秀美のガット・サロン」シリーズを東京のハクジュホール他日本各地で開催、ガットを張った弦楽器を含むバロックからロマン派に至るプログラムを続けている。
バッハの組曲を演奏しながら詳説するレクチャー・コンサート・シリーズ「ガット・カフェ・スペシャル」の内容を記録し、解説と校訂楽譜を加えた「無伴奏チェロ組曲」を東京書籍から出版。その他の著書に「『古楽器』よ、さらば!」とその改訂版(音楽之友社)、「ガット・カフェ」(東京書籍)。日本音楽コンクール審査員、ライプツィヒ国際バッハ・コンクールの審査員等を歴任。第37回サントリー音楽賞受賞、第10回斎藤秀雄メモリアル基金賞受賞。東京藝術大学古楽科非常勤講師。