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齋藤秀雄メモリアル基金賞

第7回 齋藤秀雄メモリアル基金賞

第7回 齋藤秀雄メモリアル基金賞

2008年9月11日 東京にて行われた贈賞式
左より大賀典雄(当財団理事長)、大友直人、横坂源、堤剛の各氏

財団法人ソニー音楽芸術振興会(英文名称:Sony Music Foundation)[理事長:大賀典雄]は、2002年(平成14年)に、若手チェリスト、指揮者を顕彰すべく「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を創設しました。
この度、選考委員会において審議の結果、第7回 齋藤秀雄メモリアル基金賞 指揮部門受賞者は大友 直人(おおとも・なおと)氏、チェロ部門受賞者は横坂 源(よこさか・げん)氏に決定、9月11日、都内にて贈賞式が執り行われました。

受賞者

横坂 源(チェロ)
大友直人(指揮)

選考委員

<委員長>
大賀典雄(指揮者・ソニー株式会社相談役・財団法人ソニー音楽芸術振興会理事長)

<委員>
小澤征爾 氏(指揮者)
堤 剛 氏(チェリスト)

●楯
●賞金 当該年毎に1人500万円(総額1,000万円)

贈賞の言葉

  • 横坂 源氏への贈賞にあたり
    堤 剛

    横坂君、今回の御受賞本当にお目出度う! 横坂君程早くから注目され、着実にその恵まれた才能を伸ばし、大きく成長されてきた弦楽器奏者は珍らしいと言って良いと思います。勿論ここ迄に至る過程では様々な困難にもぶつかり、悩んだりする事もあったと想像されます。でも横坂君はそういう試練をもプラスに転化させ、自分の成長の糧にされてきたように思えます。御両親の暖かい愛情と励ましに加えて、毛利伯郎氏という横坂君にとって打って付けの先生にめぐり会えたのもラッキーな事でした。毛利先生のもとでチェリストとしての才能を存分に伸ばして頂き、桐朋学園で音楽家としての素養を身に付けられました。演奏活動を始められ、皆から大きな期待を寄せられましたが、更に自分を磨くべくドイツに留学されました。私には留学によって演奏家としての成熟に加え、音楽家としてたくましさが備わったように思われます。横坂君の演奏はしっかりとしたテクニックに支えられた幅広い表現力に特長があります。
    これからもますます研鑚を積まれ、世界のチェロ界を引っ張って行くリーダーの一人となって行かれる事を期待致しております。

  • 大友直人氏への贈賞にあたり
    小澤征爾

    大友直人氏はかつて私が桐朋学園やタングルウッド音楽祭で教えたこともあります。
    彼は、オーケストラのみならずオペラ指揮者としても活躍され、昨今最も多忙な指揮者となっていると聞きます。その理由には、本来のオーケストラの常任指揮者等の任にあることはもちろんのこと、クラシック音楽の発展のため様々なコンサートをプロデュースしたり、国際教育音楽祭を開催して若手演奏家の育成にも尽力され、又クラシック・ホールの音楽監督も務められ、他ジャンルのアーティストとも積極的にコラボレーションするなどがあげられるでしょう。
    大友氏の昨今のこれらの活躍に鑑み、第7回齋藤秀雄メモリアル基金賞に相応しく、今後も益々活躍されることを期待しております。

受賞の言葉

  • 横坂 源

    横坂 源(チェロ)

    この度は、権威ある齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞することができ、財団法人ソニー音楽芸術振興会の皆様、小澤征爾先生、堤剛先生を初め、これまでお世話になりました多くの方々に感謝申し上げます。

    私は高校から地元の新潟を離れ、齋藤先生ゆかりの桐朋学園で4年間学ばせていただきました。自分にとって、家族を離れて桐朋学園に進むという決断はとても勇気のいるもので、最後まで悩みました。その時、チェロを師事している毛利伯郎先生に「今しかできない経験もあるから、もし本格的に音楽を学びたいのなら桐朋へ来てみては」とお声をかけていただき、上京を決心しました。それは同時に、演奏家を志す決心でもありました。

    桐朋学園ではたくさんの友人に恵まれ、ソロはもちろん室内楽やオーケストラを学ぶ貴重な機会となりました。特に室内楽ではたくさんの先輩や、大先輩にあたる方々からアドヴァイスをいただくことができ、まず相手の音を聴くことから始まって、メンバーと一緒に一つの音楽を創り上げていく喜びや厳しさを経験しました。そして互いの意見に耳を傾けることで、より多くの視点から音楽を感じ取れるようになったと思います。

    現在、ドイツに留学して2年が経ちますが、ヨーロッパの友人たちと一緒にコンサートに出たり、オペラを観に行ったりと日常生活を共にしていく中で、より一層音楽が自分の中で自然に、身近な存在になっていることに驚きと幸せを感じています。

    これからもこの名誉ある受賞を糧に、音楽を学ぶことができる感謝の気持ちを持ち続け、真の芸術家へと精進していきたいと思います。今後とも、ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。

  • 大友直人

    大友直人(指揮)

    この度、齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞させていただくことになり、大変光栄に思いますとともに、この歳になりましてから浅学非才の私をお選びいただいたことに、いささかの戸惑いも感じております。

    中学2年の時に、「どうしても指揮の勉強がしたい」とお訪ねした渡邊曉雄先生のご紹介で、初めて齋藤先生にお会いすることができました。「桐朋の高校に入って来たらレッスンを始めましょう」とおっしゃって下さったそのお言葉を励みに入学することができたものの、その頃には既に齋藤先生の体調はかなり深刻な状況になっておられました。それでも、重い病状をおして、車椅子の上からオーケストラや指揮の指導をして下さった情熱的なお姿に接する機会に恵まれたことは、大変貴重な、かけがえのない体験でした。その後、齋藤先生と志をともにされた多くの先生方、又、直接先生の薫陶を受けられた多くの諸先輩方から熱心なご指導をいただくことになり、その方々を通して、齋藤先生の音楽や人生に対する考えかた、そしてその精神に触れられたことは、今でも私の人生の大きな支えとなっています。

    爾来、我々が享受している我が国の音楽の世界は、齋藤先生をはじめとする諸先輩方の夢と情熱、そしてご苦労の賜なのだという強い認識のもとに、今日まで、ささやかではありますが、何とか活動を続けてまいりました。これも、齋藤先生から広がった多くの方々の支えがあったからに他なりません。

    齋藤先生が撒かれた種は、現在も、世界中に計り知れない程の大きな可能性を持って広がり続けています。しかしながら一方で、先生が亡くなられて34年が過ぎた今、もし現在の音楽界を先生がご覧になられたなら、はたしてどのような感想をお持ちになられるであろうかと考える時、甚だ心許なく、身の引き締まる思いがいたします。齋藤先生が信じられた音楽の力、素晴らしさ、そして音楽をすることの意味、さらに志されていたであろう未来への夢を実現させる為に、今の私達は何をすべきなのかを、掘り下げて考えつつ、今後も精進を重ね、誠に微力ではございますが、さらなる音楽界の発展に尽くしてまいりたいと思います。

    この度の受賞にあたり、お世話になりました皆様に、この場をお借りいたしまして、心より御礼申し上げます。有難うございました。

プロフィール

  • 横坂 源(チェロ)

    1986年、新潟市生まれ。4歳半よりチェロを始める。1995年4月、第2回バッハホール音楽コンクールにおいて「バッハホール奨励賞」ならびに「未来賞」受賞。1997年8月、第8回札幌ジュニア・チェロコンクール第1部門(分数楽器)において優秀賞ならびに「山藤賞」(審査員特別賞)を受賞。1998年7月、第1回いしかわミュージックアカデミーに最年少で参加。毛利伯郎、デヴィド・ゲリンガスの公開レッスンを受け、原田幸一郎指揮アカデミー・オーケストラに出演。同年12月、第8回日本クラシック音楽コンクール全国大会弦楽器部門小学生の部で最高位(1位なしの2位)を受賞。

    2000年1月、第5回KOBE国際学生音楽コンクール弦楽器部門で最優秀賞並びに「兵庫県教育委員会賞」受賞。第3回いしかわミュージックアカデミー・チェロ部門大賞受賞。
    2002年2月にはカザルスホール「プロジェクトQ」(ベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏会シリーズ)に最年少チェリストとして出演。7月、チェリストの登竜門として知られる全日本ビバホール・チェロコンクールの第5回大会において、初の最年少第1位(15歳)を受賞。同年9月桐朋学園音楽部門創立50周年記念演奏会において、小澤征爾指揮ハイドンのチェロ協奏曲ハ長調を共演。2003年10月、大友直人指揮東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」にてハイドンのチェロ協奏曲ハ長調を演奏。2004年2月、高関健指揮新日本フィルハーモニー交響楽団、3月には大阪フィルハーモニー交響楽団とチャイコフスキー「ロココ風の主題による変奏曲」、7月には小林研一郎指揮日本フィルハーモニー交響楽団とエルガーのチェロ協奏曲、8月には梅田俊明指揮読売日本交響楽団とドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏。12月、秋山和慶指揮東京交響楽団と新潟ジルヴェスター・コンサートに出演。2005年5月に第1回ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに、9月にはルツェルン音楽祭オーケストラ・アカデミーに参加。

    2006年9月、広上淳一指揮群馬交響楽団とサン=サーンスの協奏曲、2008年3月、都民フェスティバルで、小林研一郎指揮日本フィルハーモニー交響楽団とハイドンの協奏曲ニ長調、7月、大友直人指揮大阪シンフォニカー交響楽団とショスタコーヴィチのチェロ協奏曲、同月、山下一史指揮仙台フィルハーモニー管弦楽団とハイドンの協奏曲ニ長調を演奏。8月には、軽井沢八月祭に出演予定。「題名のない音楽会21」やFM「名曲リサイタル」などでも好評を得ている。

    サントリー株式会社所有の1710年PIETRO GIACOMO ROGERI 制作のチェロを貸与されている。2005年第15回出光音楽賞受賞。

    チェロを鷲尾勝郎氏、毛利伯郎氏、ジャン・ギアン・ケラス氏に師事。桐朋学園ソリストディプロマ・コースを経て、現在、シュトゥットガルト国立音楽大学に在学中。

  • 大友直人(指揮)

    2004年〜 東京交響楽団 常任指揮者
    2008年〜 京都市交響楽団 桂冠指揮者
    2004年〜 東京文化会館 音楽監督

    1958年東京生まれ。桐朋学園大学卒業。指揮を小澤征爾、秋山和慶、尾高忠明、岡部守弘各氏に師事。タングルウッド音楽祭において、A.プレヴィン、L.バーンスタイン、I.マルケヴィッチからも指導を受ける。桐朋学園大学在学中からNHK交響楽団の指揮研究員となり、22歳で同楽団推薦によりNHK交響楽団を指揮してデビュー。ほぼ同時期に東京交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団、読売日本交響楽団等に次々に客演。以来今日まで在京オーケストラをはじめ各地のオーケストラの定期演奏会に出演している。

    日本フィルハーモニー交響楽団・正指揮者、大阪フィルハーモニー交響楽団・指揮者、東京交響楽団・正指揮者、京都市交響楽団・首席指揮者および常任指揮者兼アーティスティック・アドヴァイザーを経て、現在、東京交響楽団常任指揮者、京都市交響楽団・桂冠指揮者、東京文化会館・音楽監督を兼任している。
    この間1986年大阪フィルハーモニー交響楽団とのヨーロッパツアー、1992年東京交響楽団との東南アジアツアー、1994年ポルトガル公演、1996年ヨーロッパツアー、2001年ヨーロッパツアーなどでも絶賛を博している。また1988年、日生劇場における「魔弾の射手」でのオペラデビュー以来、「オルフェオとエウリディーチェ」「リゴレット」「魔笛」「忠臣蔵」「ジュニア・バタフライ」などを指揮し、高く評価されている。2000年、第8回渡邊暁雄音楽基金音楽賞を受賞。近年では、東京交響楽団定期演奏会での黛敏郎「古事記」、エルガー「神の国」、「使徒たち」、「ゲロンティアスの夢」などが大きな話題を呼び、高く評価された。京都市交響楽団とも地に足のついた活動を行い、これまでに2度にわたる東京公演を行い、好評を博している。また、2005年5月、2006年5月、東京国際フォーラムで開催された「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」にて、その手腕をクラシックファン以外にも知らしめた。
    2006年は、2月に新国立劇場でのオペラ「愛怨」(作曲:三木稔、台本:瀬戸内寂聴)を東京交響楽団と共演で指揮、6月に東京交響楽団と京都市交響楽団の合同演奏で、東京・京都の両都市でシェーンベルク:「グレの歌」を指揮し、注目を集めた。また、2006年7月イタリアで開かれたプッチーニ音楽祭にて三枝成彰作曲オペラ「Jr.バタフライ」を指揮し、好評を博し、特に半世紀以上プッチーニの作品しか取り上げなかったプッチーニ音楽祭でプッチーニ以外の作品が取り上げられたという点でも、大いに注目を集めた。
    これまでにコロラド交響楽団、インディアナポリス交響楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団などへの客演も行ない、欧米での活躍にも大きな期待が寄せられている。また、2001年7月には、フィルハーモニア管弦楽団の日本ツアーでも同オーケストラを指揮し、絶賛を博した。
    近年では教育的活動にも力を注ぎ、「こども定期演奏会(東京交響楽団)」や「こどものためのコンサート(京都市交響楽団)」を行うほか、教育的音楽セミナー「ミュージック・マスターズ・コースinかずさ」を盟友である指揮者アラン・ギルバートと毎年開催するなど、活発な活動を行っている。
    これまでに数多くのソリストと共演しているが、その中にはヴァイオリンのG.シャハム、A.デュメイ、F.P.ツィンマーマン、J.ベル、J-J.カントロフ、S.ミンツ、ヴィオラのG.コセ、Y.バシュメット、チェロのM.ブルネロ、D.ゲリンガス、ピアノのR.ルプー、A.ワッツ、B.L.ゲルバー、I.モラヴェッツ、J.-Y.ティボーデ、C.カツァリス、J.-F.コラール、C.オルティーズ、H.グリモーらが含まれ、ホセ・カレーラスのサポートでも絶賛を博した。そして常に多くのアーティストから再共演を要請されている。

    レパートリーは幅広く古典から現代音楽に及ぶが、20歳の時の初レコーディング以来数多くのCDがリリースされている。