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齋藤秀雄メモリアル基金賞

第9回 齋藤秀雄メモリアル基金賞

第9回 齋藤秀雄メモリアル基金賞

2010年10月19日 東京で行われた贈賞式
左より小澤征爾、キンボー・イシイ=エトウ、大賀典雄、長谷川陽子、堤 剛の各氏

財団法人ソニー音楽芸術振興会(英文名称:Sony Music Foundation)[理事長:大賀典雄]は、2002年(平成14年)に、若手チェリスト、指揮者を顕彰すべく「齋藤秀雄メモリアル基金賞」を創設しました。
この度、選考委員会において審議の結果、第9回 齋藤秀雄メモリアル基金賞 指揮部門受賞者はキンボー・イシイ=エトウ氏、チェロ部門受賞者は長谷川 陽子(はせがわ・ようこ)氏に決定、10月19日、都内にて贈賞式が執り行われました。

受賞者

長谷川 陽子(チェロ)
キンボー・イシイ=エトウ(指揮)

選考委員

<委員長>
大賀 典雄(指揮者・ソニー株式会社相談役・財団法人ソニー音楽芸術振興会理事長)

<委員>
小澤征爾 氏(指揮者)
堤 剛 氏(チェリスト)

●楯
●賞金 当該年毎に1人500万円(総額1,000万円)

贈賞の言葉

  • 堤 剛

    長谷川 陽子氏への贈賞にあたり
    堤 剛

    長谷川陽子さんの最近の活躍振りには本当に目を見張らせられるものがあります。彼女の演奏家としてのキャリアは長く、確実に実績を積み重ねて来られました。その間結婚もされ、お子さんももうけられました。私が瞠目したのはむしろその後の長谷川さんの演奏活動です。普通ですと、家庭を持ってしまわれると音楽外の諸々な事にもエネルギーや時間を費やさなくてはならず、どうしてもチェロに向ける集中度が薄くなってしまうものです。処が長谷川さんはあたかもそれによって新しい活力を得たかの如く、より輝かしく幅の広い活動を始められました。それには母校桐朋学園での教授活動や霧島国際音楽祭への参加も含まれます。

    高名な評論家であられた長谷川武久氏を父に持たれ、お姉様はヴィオラ奏者という恵まれた家庭環境をバックにすくすくと成長され、名伯楽井上頼豊氏のもとで着々と実力を蓄えて行かれました。井上先生と齋藤先生は手を携えて桐朋学園のみならず日本のチェロ界の水準を世界的なものにされ、盛んにして下さった大変な功労者です。やさしいお人柄ではありましたがその指導内容はとても厳しいものであったと伺っております。長谷川さんは、その後フィンランドに留学され名チェリストA. ノラス氏のもとで演奏家として磨きをかけられ国際的な演奏活動を始められました。

    最近の長谷川さんの演奏には「輝かしさ」「表現力」に加えてリーダー的「たくましさ」が含まれてきたように感じております。やはりこういう方を模範にしながら、チェリストに限らず若い演奏家・芸術家が伸びて行くのだと思います。これからも、演奏・教育活動の両面で、ますますの次世代の音楽家にとっての模範として、ご活躍を願い、充実した演奏活動を通じて齋藤秀雄メモリアル基金賞の精神をより広く多くの方に識って頂くべく努力をされますことを期待致しております。

    お目出度う御座居ました!

  • 小澤 征爾

    キンボー・イシイ=エトウ氏への贈賞にあたり
    小澤 征爾

    2006年から2008年までベルリン・コミッシェ・オーパーで首席カペルマイスターとして数々のオペラ作品を指揮し、オペラ指揮者として多くの経験を積んだキンボー・イシイ=エトウ氏は、今年の12月よりマクデブルク歌劇場の音楽監督を務めることになった成長著しい指揮者です。
    彼は、幼少の頃よりヴァイオリンを学び、ヴァイオリニストとしても優秀でありましたが、指揮者転向の際に私のところにやってきました。またタングルウッド音楽祭で私の副指揮を務めてくれたこともあります。ヴァイオリニストになるつもりでいた彼の音楽性や才能が、はっきりと指揮に現れているのが素晴らしく、私も当時より彼の将来に大きな期待を寄せていました。
    近年は日本でもNHK交響楽団、新日本フィルをはじめ多くのオーケストラを指揮されており、また海外でもアメリカを中心にヨーロッパ、アジアで広く活躍されています。
    今回の齋藤秀雄メモリアル基金賞の受賞を機に、キンボー・イシイ=エトウ氏が指揮者として益々躍進され、活躍されることを心より期待しております。

受賞の言葉

  • 長谷川 陽子

    長谷川 陽子(チェロ)

    この度は齋藤秀雄メモリアル基金賞という大きな意味のある素晴らしい賞を頂き、私自身が心から驚くとともに大変光栄に存じ、改めて身が引き締まる思いでおります。私は、デビューは早かったかもしれせんが決して器用なほうではなく、地道にコツコツとチェロ道・音楽道を亀の足取りで歩んできました。父が音楽関係の仕事をしておりましたので、物心ついたときから、齋藤秀雄先生の教えが身近にありました。5才から桐朋学園大学付属音楽教室で音楽の楽しさを教えて頂き、9才のチェロの手ほどきからじっくりと見守って下さった齋藤先生とも非常に親交の深かった故井上頼豊先生、そして母校・桐朋学園の数多くの錚々たる先生方・大先輩から得た刺激、留学先のシベリウス・アカデミーでアルト・ノラス先生にもとても親身に指導頂いた事、そして数々の素晴らしい演奏家との共演から得る煌めき・・・思い出せば本当に多くの方々に守られて今日まで続けてこられた事に、心から感謝している次第です。
    チェロ界は幸せなことに縦横の繋がりがとても風通し良く、学生時代は私も井上門下でありながら、井上先生から「この曲は○○先生がお得意だから、習いに行って来なさい。」とずい分多くの先生方の門を叩きました。それはまず井上先生の素晴らしい仁徳とお人柄のおかげ、そして自分の弟子でもない私の不躾なレッスンにも快く扉を開けて下さった素晴らしい先生方のおかげ。私にとっては雲の上の伝説の巨人の故・齋藤秀雄先生の愛弟子であった諸先生みなさまに育てて頂いたことを、今でも本当にかけがえのない宝と思っております。
    そうして気がつけば母校で後輩たちの指導という立場を頂き、今は演奏する事と同じくらい教える事からも多くの事を考えさせられ学ばせてもらっているような気がします。
    今までは自分のためにチェロを弾いてきた私ですが、今まで大先輩方の背中を見て背筋がきりりと伸びる想いをさせていただいたように、それを次の世代に確実にバトンタッチしてゆけるよう、私も音楽人として今後ますます地に足をつけどっしりと歩を進めてゆかねばと、この度の受賞を機に改めて実感している次第であります。
    今後も亀の足取りで音楽人生を歩むことと思いますが、どうぞ長い目で今後ともよろしくご鞭撻、ご指導頂ければとても幸せに思います。
    この度は本当に光栄な賞をありがとうございました。

  • キンボー・イシイ=エトウ

    キンボー・イシイ=エトウ(指揮)

    私はヴァイオリニストを目指しジュリアード音楽院に留学していましたが、当時師事していたドロシー・ディレイ先生の薦めで、指揮者に転向し、また先生のお力添えで、右も左も分からぬままタングルウッド音楽祭に参加しました。時を同じくして、小澤先生が天使のように現れ、しごかれました。先生の仰っていることが分からなく辛い時もありました。しかしそのおかげで、たくさんの人やオーケストラと出会い、音楽の作り方などを勉強することができました。その起点にあるのは小澤先生であり、本当に感謝の一言です。
    なお、この度齋藤秀雄メモリアル基金賞の受賞者にお選びいただきましたが、未だ日本の音楽界に貢献できていない私は、このような栄誉ある賞に値する者ではないと、当惑及び恐縮しております。
    自分自身の音で力量がはっきりするチェロ部門での受賞者の方々とはもちろんのこと、指揮部門で受賞された歴代の立派な方々の列にも自分の名前を連ねるのは、賞の価値を損ねることになりかねないとも思い、内定のお話をいただいた折には、「自分の未熟さゆえにこの賞はいただけない」との思いを、選考委員の小澤征爾先生にお伝えいたしました。
    栄えある受賞をお断りするという大変な失礼な行動をとり、さらには、私よりこの賞にふさわしい人物がいるのではないか、というお話もしました。最終的に、もしも先生のご好意をお受けするならば、日本の音楽界の未来に少しでも貢献できるよう、次世代の音楽家を育成する団体に賞金全額を寄付するという私の意向を、小澤征爾先生にご理解していただいた上で、受賞させていただくことにいたしました。
    この指揮部門の賞の本来の意図、つまりは齋藤秀雄先生、小澤征爾先生、大賀典雄理事長の奥深い愛情と心温まるお心遣いが、届くべきところに届くことが私の願いであります。
    私自身、今後より一層の精進を重ね、少しでも日本の音楽界に貢献することができれば幸いです。そして、皆様と共に日本の音楽界の明るい未来を信じ、次世代の音楽家育成を見守って行きたいと思います。
    最後にこの場をお借りして、これまでお世話になりました皆様方に心より感謝の意を表します。ありがとうございました。

プロフィール

  • 長谷川 陽子(チェロ)

    9歳から桐朋学園大学付属「子供のための音楽教室」で井上頼豊氏に師事。桐朋女子高等学校音楽科に入学の15歳の時、第54回日本音楽コンクールで第2位。1987年、音楽之友社主催「フレッシュ・アーティスト・シリーズ」にてデビュー・リサイタルを行う。1988年小林研一郎指揮、日本フィルハーモニー交響楽団のニューイヤー・コンサートにおいて協奏曲デビュー。同年、桐朋音楽大学に入学。この間ビクターエンタテインメントの専属アーティストとして、デビュー・アルバム「珠玉のチェロ名曲集」をリリース。邦人チェリストとして初めてクラシック・ヒットチャート第1位になり、注目される。1989年より文化庁派遣在外研修員として、フィンランドのシベリウス・アカデミーに留学、アルト・ノラス氏に師事(1992年首席で卒業後帰国)。1990年、ロストロポーヴィチ国際チェロ・コンクール特別賞受賞。
    これまでに日本の主要オーケストラと共演した他、フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団(マレク・ヤノフスキー指揮)、ハンガリー交響楽団、ウィーン・コンツェルトフェライン室内管弦楽団、モスクワ・フィルハーモニー交響楽団(指揮:ワレリー・シナイスキー)などにソリストとして迎えられている。また、リサイタルも各地でおこなっており、1993年、1999年にカザルス・ホールの「パブロ・カザルスに捧げるチェロ連続リサイタル」に出演。1995年、紀尾井ホールのオープニング・ガラとともにリサイタルを行う。また、近年はパスカル・ロジェとのアンサンブルで全国ツアーを行い、何れも好評を博している。また、1997年にはNHK‐BS「森と湖の響き フィンランド音楽紀行」でナビゲーターを務め大きな反響を呼んだ。2000年は、ホノルル交響楽団(大賀典雄)、NHK交響楽団(オラモ・サカリ)と共演、フィンランドの「ナーンタリ音楽祭」へ招待参加。2001年は、フランスのディヴォンヌ音楽祭にロジェ・トリオで参加。また、フィンランドの天才アコーディオン奏者 ミカ・ヴァェユリュネンとの共演でCD「展覧会の絵」を発売。レコード芸術特選盤に選ばれた。2003年、ズデニェク・マーカル指揮/プラハ交響楽団とのツァーで共演したドヴォルザークのチェロ協奏曲は高く評価され、2004年にプラハ、2005年に日本にて再度共演した。高い技量と豊かな音楽性には定評があり、日本を代表するチェロ奏者の一人である。NHK-FM「おしゃべりクラシック」では渡辺徹とともにパーソナリティを務め、あたたかな人柄がにじみでる司会ぶりは多くのリスナーの支持を集めた。2006年4月から放送されたNHK朝の連続ドラマ小説「純情きらり」では、テーマ曲演奏を担当。
    CDは、ビクターエンタテインメントよりデビュー・アルバムをはじめ、「G線上のアリア」、「ラフマニノフ&ショスタコーヴィチ/ソナタ集」、平成7年度文化庁・芸術作品賞と日本プロ音楽録音賞を受賞した「コダーイ/無伴奏チェロ・ソナタ」、パリ録音の「サパテアード〜スペインのバラ」、ドイツ録音の「ブラームス/ソナタ」、ベスト小品集「ナチュラル」、ユニット参加した「ヴァオイセス スターク・バンド」、ベスト盤「愛の言葉」、第2弾の無伴奏チェロ曲集「ソロ」、初のポビュラー・アルバム「ノルウェーの森」、レコード芸術特選盤の「バッハ/無伴奏チェロ組曲」、福田進一とボサノヴァに挑戦した「WAVE〜ジョビンへのオマージュ」、日本歌曲を集めた「初恋」、プラハ録音の「シューマン&ドヴォルザーク:チェロ協奏曲」、「バーバー&エルガー:チェロ協奏曲(下野竜也指揮/チェコ・ナショナル響)」を、また本年7月には「愛の小径〜チェロ名曲集」をリリース。その他、小林美恵、パスカル・ロジェとのピアノ・トリオ『ラヴェル&ショーソン/ピアノ・トリオ』(onyx/東京エムプラス)をリリース。
    第3回アリオン賞審査員奨励賞(’85年)、村松賞(’88年)、霧島国際音楽祭賞(’88年)、モービル音楽賞奨励賞(’91年)、新日鉄フレッシュ・アーティスト賞(’91年)他、受賞多数。
    桐朋学園大学音楽学部非常勤講師。後進の指導にも務めている。

    公式ホームページ:http://yoko-hasegawa.com/

  • キンボー・イシイ=エトウ(指揮)

    アメリカを中心にヨーロッパ、アジアで活躍しているキンボー・イシイ=エトウは、今後が期待される指揮者の一人として注目を集めている。
    ニューヨーク州カユーガ室内管弦楽団の音楽監督を2006/2007のシーズンまで7シーズン務めた後、2007/2008シーズンよりアマリロ交響楽団(テキサス州)第16代音楽監督に就任。また、ベルリン・コーミッシェ・オーパー(KOB)の首席カペルマイスターとして、2006/2007、2007/2008のシーズンにおいて、「魔笛」、「フィガロの結婚」、「セヴィリアの理髪師」、オッフェンバック「ホフマン物語」、ラヴェル「子供と魔法」やオーケストラ・コンサートなどで質の高いパフォーマンスを披露し、その後も客演としてKOBとの関係が続いている。
    ゲスト・コンダクターとして、ポツダム室内アカデミー、ドイツ室内管弦楽団、アウグスブルク歌劇場管弦楽団、ボーフム交響楽団、ネザーランド・フィル、スロヴァキア・フィル、マンチェスター・カメラータ、シレジア・フィル、ソナユラン交響楽団、ボストン交響楽団室内管弦楽団、コスタ・リカ国立交響楽団、リマ・フィル、上海交響楽団、台湾国家交響楽団、中国放送交響楽団等を指揮している。日本においては、NHK交響楽団、新日本フィル、読売日本交響楽団、東京都交響楽団、日本フィル、群馬交響楽団、名古屋フィル、京都市交響楽団、大阪シンフォニカー、九州交響楽団、札幌交響楽団などを指揮している。
    幼少期を日本で過ごしヴァイオリンを風岡裕氏に学ぶ。12歳で渡欧、引き続きヴァイオリンをウィーン市立音楽院でワルター・バリリ、さらにジュリアード音楽院にてドロシー・ディレイ、ヒョー・カンの各氏に学んだ後に指揮に転向。
    1992年より小澤征爾、マイケル・チャーリー、小松長生の各氏に指揮法を師事、またマネス音楽院にて楽曲分析及び作曲法を学ぶ。1993年、1995年のタングルウッド音楽祭に奨学生として参加し、グスタフ・マイヤー、レナード・スラットキン、デイヴィット・ジンマン、サイモン・ラトル各氏に師事。1995年、デンマークで開催されたニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで4位に入賞。
    1996年から98年まで、ボストン交響楽団とニューヨーク・フィルの定期演奏会、及びタングルウッド音楽祭にて小澤征爾、サイモン・ラトル、ベルナルド・ハイティンク、ジェイムズ・コンロン、アンドレ・プレヴィン各氏の副指揮者を務めた。
    2009年4月、大阪交響楽団(旧 大阪シンフォニカー交響楽団)首席客演指揮者に就任。
    2010年12月より、ドイツのマクデブルク劇場の音楽監督に就任予定。
    (2010年4月現在)

    公式ホームページ:www.kimboishii.com