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齋藤秀雄メモリアル基金賞

第20回 齋藤秀雄メモリアル基金賞

第20回 齋藤秀雄メモリアル基金賞

2022年2月24日 東京にて行われた贈賞式
左より 軽部 重信(当財団専務理事)、広上 淳一氏、寺西 基之氏、笹沼 樹氏、原田 慶太楼氏、堤 剛氏、水野 道訓(当財団理事長)

公益財団法人ソニー音楽財団(所在地:東京都千代田区、理事長:水野道訓、英文名称:Sony Music Foundation)は、第20回(2021年度) 齋藤秀雄メモリアル基金賞 チェロ部門受賞者を 笹沼 樹(ささぬま・たつき)氏、指揮部門受賞者を 原田 慶太楼(はらだ・けいたろう)氏に決定いたしました。

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点より、贈賞式はオンライン上でライブ配信にてとりおこないました。

受賞者

笹沼 樹(チェロ)
原田 慶太楼(指揮)

名誉顧問
小澤征爾 氏(指揮者)
選考委員

<選考委員長>
水野道訓(ソニー音楽財団 理事長)

<永久選考委員>
堤 剛 氏(チェリスト)

<任期制選考委員(3年)>
片桐卓也 氏(音楽ライター)
寺西基之 氏(音楽評論家)
広上淳一 氏(指揮者)

●楯
●賞金 当該年毎に1人500万円(総額1,000万円)

贈賞の言葉

  • 永久選考委員 堤 剛

    笹沼 樹 氏へ「贈賞にあたり」
    永久選考委員 堤 剛

    笹沼さんのチェリストとしての特質を一言で言い表せば、久々に登場した大型であり本格的な演奏家であることでしょう。大型という意味は笹沼さんの立派な体格を表しているだけでなく、これからの時代に要求される音楽家としての資質を十分備えておられるからです。先ず言えることは笹沼さんが人間としてのスケールの大きさだけでなく、音楽家・演奏家として幅広い面でその抜きんでた才能を開花しておられる事です。ソリストとしての格段のテクニックは勿論ですが、アンサンブル奏者としての存在感には目を見張らされるものがあります。そしてオーケストラ演奏にも興味を持っておられ、NHK交響楽団のアカデミー生として数年間在籍されました。でも彼の本領は室内楽の分野、それも弦楽四重奏に於けるチェリストとしての素晴らしさです。笹沼さん達が在学中に立ち上げられたカルテット・アマービレの最近の成長振り、多彩な活躍は目覚ましく各所で絶賛を受けております。その中でアンサンブルの土台を支えるだけでなく、音楽作りの中心になっておられるのが笹沼さんです。

    そして私が強調させて頂きたいのが彼のひたむきな向学心です。これは音楽だけでなく他の広い分野にわたって関心があり、常に新しい事を知ろう、求めようと努力する姿勢の故だと思います。それを如実に表しているのが桐朋学園の高等学校音楽科を卒業された後母校の学習院に戻られてドイツ文学を専攻されつつ、桐朋学園のソリスト・ディプロマ・コースでチェロ演奏に磨きをかけるだけでなく音楽全体の幅を広める努力をされた事です。

    齋藤秀雄先生が音楽を勉強していく上で特に大事だと仰っておられたことが二点あります。一つは語学能力で、もう一つは演奏家として全人的であるべきだ、ということです。よく「ドイツ音楽を本当に理解しようとするにはドイツ語が解らなくては駄目だ」、同じように「フランス音楽を本当に自分のものにする為にはフランス語が喋れなくてはいけない」と。これは優れた語学力を持った笹沼さんにぴったりの言葉だと思います。また「優れた演奏家になるためには無論技術的な完成度も必要だけれども、それを裏付ける豊富な知識と室内楽・アンサンブル力を基本とした幅広い音楽作りの能力が不可欠だ」と強調されておられました。笹沼さんはそれを立派に具現されており、齋藤先生が築かれた我が国の音楽教育を立派に継承されています。それ故私はこの賞を差し上げるのに笹沼さん程相応しい方は居られないのではないかと思っており、心からの「おめでとう!」を言わせて頂きます。

     

    【贈賞式でのスピーチ】

    笹沼さん、このたびのご受賞、本当におめでとうございます。

    笹沼さんと中学2年生の時に桐朋学園の学長室でお会いしたことははっきりとは思い出せませんが、その後、高校に入学されてから今まで、音楽的なことのみならず、様々な角度や視点からアドバイスをしてまいりました。

    私が常々感心しておりましたのは、笹沼さんの真摯な姿勢と論理的な思考、そして飲み込みの早さでした。これは、齋藤先生が目指された教育法と相通じるものがあるように私には思えます。チェロの演奏に関しては、音作り・歌い方等をお話しさせていただいたのですが、思い返してみますと、その多くは齋藤先生や、齋藤先生がベルリンで師事されたフォイアマン教授が仰っていたことの受け売りでした。

    スケールが大きく、気質と才能に恵まれた演奏家で、すでに輝かしいキャリアを積んでこられた笹沼さんですが、これからもひたむきな向学心・向上心をもって、大きく成長されることを期待いたしております。
    このたびは本当におめでとうございました。

  • 原田 慶太楼 氏へ「贈賞にあたり」
    選考委員 片桐 卓也 (音楽ライター)/寺西 基之 (音楽評論家)/広上 淳一 (指揮者)

    原田慶太楼さん、このたびは受賞おめでとうございます。

    原田さんの指揮する演奏会に出かけるたびに、いつも新しい発見があります。それは例えば日本ではほとんど演奏されて来なかった南北アメリカ大陸の音楽のレパートリーであり、またガーシュインなど、日本でも良く知られた作曲家の作品の場合でも、その音楽の中に宿っている本来の魅力の再発見であり、そうした作品に向かって行く原田さん自身の情熱的な姿勢です。そして、アメリカだけでなくロシアでも学んだ経験から、おそらくはもっとたくさんの音楽的情熱の対象をお持ちのはずで、それらが今後の指揮活動のなかで発揮されて行くことに大きな期待感を持っています。

    2021年4月からは東京交響楽団の正指揮者に就任され、アメリカでは2020年からジョージア州のサヴァンナ・フィルハーモニックの音楽&芸術監督に就任されていますが、まったく文化的背景の違うふたつの国を行き来しながら活動しているヴァイタリティにも、新しい世代の指揮者としての意気込みを感じています。

    もうひとつ、原田さんの音楽活動で注目していることは、日本人の作曲家を積極的に取り上げようとしている点と、若い世代の作曲家を探し、その才能を育てようとしている点です。

    アメリカなどでの指揮活動を盛んに行っている原田さんは、現在、海外で知られている日本人作曲家がとても少ないこと、知られている作曲家の名前が限られていることを常に嘆いていらして、その状況を変えたいとおっしゃっています。そこで、吉松 隆さんの作品を海外のオーケストラ公演で取り上げることで、日本の音楽の今を広く紹介されています。と同時に、より若い世代の日本人作曲家を発掘し、その才能を羽ばたかせる手助けにも意欲的です。サントリーホールと東京交響楽団が共催している「こども定期演奏会」シリーズの中で、一般の子供たちから短い音楽テーマを募集し、選ばれたテーマを元に若い作曲家がオーケストラ作品を作り上げるという試みを行いました。これは子供たちにとっても、また若い作曲家にとってもチャレンジングな取組みで、これまでに無い発想によって、クラシック音楽を身近に感じさせる試みだと思います。それは本当に生活のなかに音楽を根付かせたいという原田さんの熱い想いが実現させた取組みでしょう。

    オーケストラの指揮だけでなく、オペラのジャンルでも多くの実績を残されているので、これからは日本でもより多くのオペラ作品の指揮を聴かせて下さることを期待しております。

     

    【贈賞式でのスピーチ】
    永久選考委員 堤 剛

    My heartiest congratulations! 原田さん、今回のご受賞、誠におめでとうございます。直接指導を受けられたわけではいらっしゃいませんが、今まで齋藤先生や小澤先生が築きあげてこられたものがしっかりと継承されていることを実感し、大変嬉しく思っております。

    米国サヴァンナ・フィルハーモニック音楽監督ならびに芸術監督、加えて東京交響楽団の正指揮者としてこれから益々幅広い活動をされておられる原田さんですが、交響曲だけでなく、オペラ指揮者としての活動や、室内楽・バレエ・ポップス・ジャズ等の指揮のみならず、教育プログラムにも強い関心をもたれていることを頼もしく思っております。

    また、日本人作曲家の作品、とくに若い作曲家の作品を積極的に取り上げ、それを人々の生活のなかに音楽を根付かせるために役立てようとする原田さんの姿勢には感服いたします。

    これからも健康に留意されながら、益々のご成功を期待しております。
    このたびは本当におめでとうございました。

受賞の言葉

  • 笹沼 樹

    笹沼 樹(チェロ)

    【受賞の言葉】

    この度は名誉ある齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞者に選出してくださりありがとうございます。受賞の連絡を受け、日頃から私の活動を応援し、見守ってくださっている先生方、様々な企画、機会を作ってくださる方々、家族、仲間への感謝の念が改めて込み上げました。

    建て替わる前の桐朋学園仙川キャンパス新館を入って1番奥にある学長室で堤剛先生と初めてお会いした時のことは今でも鮮明に覚えています。中学校2年生だった私に音楽のことではなく、「今興味を持っていることはなんですか」とお尋ねになり、戦国時代の合戦について、どの戦のどのような部分が興味深いのかお話ししました。音楽の話をするのだと思っていたこともあって少し戸惑った記憶があります。

    その後師事し、毎週レッスンを受けるようになってから、先生の様々な角度からのアドバイスによって私の思考回路はどんどんと開拓されてゆきました。そして初めてお会いした時の先生からの質問は、「幅広い視野で物事を見つめることの大切さ」に由来するものだと気付きました。

    一方で、毎回のレッスンで一貫して教わる共通の語法のようなものがあります。それは間の取り方であったり、メロディの跳躍の歌い方、音の発音の仕方などについてであり、いつも最後に「齋藤先生がおっしゃっていたことなのだけど」と付け加えられます。それはシュタルケル先生の場合もあれば、フォイアマン先生やカザルス先生のこともあり、はじめの1,2年は心の中で驚きを隠せなかった私も、師事して13年目になる今日では時々、遠い昔にその神様のような先生方から教えを受けたことがあるような気持ちになってくることさえあります。

    このように、多角的なアプローチで作品や演奏に向き合うことと、偉大な先人の真髄を継承していくという2つの軸を授けてくださったのは堤先生であり、その教えこそ齋藤秀雄先生の理念であるのだろうと考えています。

    齋藤先生がお生まれになってから今年で120年が経ち、当時出来たてだった新曲は近代作品となり、それに続いて素晴らしい作曲家の現代作品が多く世に出ています。それだけでなくコロナ禍の影響もあり配信やソーシャルメディアでの発信が大きな役割を持つなど、芸術家が置かれる環境は激変しています。この先もさらに進化していくであろう音楽界において自分ができることは何かを常に自分に問いかけ、先生方から授かったものを継承して参ります。

     

    【贈賞式でのスピーチ】

    このたびは栄えある「齋藤秀雄メモリアル基金賞」の受賞者に選出してくださり誠にありがとうございます。私の大師匠にあたる齋藤秀雄先生のお名前を冠したこの賞の第20回という節目の回に、こうして受賞できたことを大変光栄に思います。

    桐朋女子高等学校に在学中から、ソロ、室内楽(とくにカルテット)、オーケストラの3つを軸に精進してまいりました。その全ての分野で尊敬する先生方、共演者や周囲の音楽家に恵まれ、それぞれの作品の素晴らしさに感動する日々を送ってきました。そのため、僕は、すべてこの3本の柱を自分の軸にして音楽家をやっていこうと、心に決めました。

    でも時々、中途半端じゃないか、それぞれの道がおざなりになっていないか、遠回りしていないか、など不安に思うこともありました。ですが、このたび選考委員の先生方、ソニー音楽財団の皆様からこのような賞をいただいたことによって、今までやってきたことは間違いではなかったと、少しほっとすると同時に、これまで僕を信じて様々な機会を与えてくださったり、音楽を共にした関係者の方に、少し恩返しができたのかなと思っている次第です。

    新型コロナウイルスの感染拡大状況が収まれば、海外へも積極的に演奏活動を行い、これからも精進してまいります。あたたかく見守っていただけたらと思います。
    このたびはありがとうございました。

  • 原田 慶太楼

    原田 慶太楼(指揮)

    【受賞の言葉】

    To receive the Saito Hideo Memorial Fund Award is such an honor.

    Across the globe, Maestro Saito Hideo’s conducting technique has had a profound effect on music making. While I did not have the privilege of meeting the legend, his pedagogy is exercised, appreciated, and creates beautiful music. Through him and Maestro Ozawa, a young Japanese conductor like myself has any chance of building a career outside Japan.

    In my early days of becoming interested in conducting, I would often watch videos of Maestro Ozawa and mimic his gestures to understand what it is like to create music this way. Therefore, the Saito Method has been an influential part of my musical journey.

    I still have so much to learn and I will continue to strive to embody the composer’s spirit and to bring his or her compositions to life for my entire career. With the Saito Hideo Memorial Fund Award, I am able to hone and develop my skills as an artist. Thank you.

     

    この度は齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞することが出来、大変光栄です。

    世界中で、齋藤秀雄先生の指揮法は音楽作りに大きな影響を与えてきました。私はそのレジェンドに直にお会いすることは叶いませんでしたが、彼の指導法は継承され、高く評価されており、今でも美しい音楽を生み出しています。齋藤先生とマエストロ小澤のおかげで、私のような若い日本人指揮者が海外でのキャリアを積むチャンスを得ることが出来ております。

    私が指揮することに興味を持ち始めた頃、しばしばマエストロ小澤のビデオを見ては動きをまね、こんなふうに音楽を作り出すのはどんな感じなのかを理解しようとしました。ですから齋藤メソッドは、私の音楽への世界へ羽ばたく動機となりました。

    まだまだ多くの事を学ぶ必要があるため、私の音楽家としての人生をかけてこれからも作曲家の心を具現化し、その作品の魂を蘇らせる努力を続けてまいります。齋藤秀雄メモリアル基金賞を励みに、私は芸術家として引き続き自分のスキルを研ぎ上げ発展させてまいります。ありがとうございました。

     

    【贈賞式でのスピーチ】

    本日はありがとうごさいました。フォーマルな日本語のスピーチは慣れておりませんが、頑張ります。

    まず初めに、アジア人の僕が世界でキャリアを持てるのは、マエストロ齋藤秀雄、マエストロ小澤征爾、秋山和慶先生、広上淳一さん、大植英次さん、大野和士さん等、大先輩の指揮者達のおかげです。なのでこの「齋藤秀雄メモリアル基金賞」は、僕にとって本当に意味があり感謝している賞です。

    師匠のロリン・マゼールの言葉で「What is most unique the only Keitaro can do? 慶太楼しかできないユニークなことって一体何だろう?」という、僕にとって大切な言葉があります。その答えを見つける音楽の人生の旅を歩んでいます。

    音楽が好きになったきっかけは、ミュージカルです。本当は舞台で歌い踊りたかったのですが、上手ではありませんでした。そこでオーケストラのピット・ミュージシャン、マルチ・ミュージシャンとしてキャリアを作ろうと、アメリカの芸術科高校に学びました。
    マルチ・プレイヤーになるために一番大事なのは、クラシック、ジャズ、ロック、ポップス、タンゴなどの多ジャンルの音楽が容易に演奏できることです。このトレーニングと、奏者としての経験は今の自分にとてもプラスになっています。
    高校生の時にラジオを聴きながらランニング中、大変美しい音楽を聴いて感動し、立ち止まって涙を流したことがありました。それは、パバロッティとフレーニが歌う「ラ・ボエーム」第1幕の終わり、人生初のオペラ体験でした。その瞬間、オペラの世界に完全に引き込まれました。もともとミュージカルが大好きだった僕にとって、オペラは最高級の芸術作品です。大学院ののちオペラハウスに10年間所属し、マゼールのアシスタントや、レヴァインの代役を務めることができました。

    12年前には、ボストン交響楽団から「小澤征爾賞」をいただき、そのご縁から、タングルウッドでジョン・ウィリアムズと懇意になり、彼のアシスタント指揮者として長年仕事をしています。彼が手掛けたシネマ・コンサート(映画を上映しながら生のオーケストラを演奏するコンサート)のスペシャリストとして彼に依頼され、多くの指揮をしています。そのため、音楽と映像のタイミングを合わせるのが得意になり、2021年のジルベスター・コンサートでは、その技術が生かされました。

    シンシナティ交響楽団の指揮者の頃には、音楽教室の素晴らしさを体験しました。子どもたちの前でただ有名曲を演奏するだけではなく、今子どもたちが学校で何を勉強しているかを知り、歴史や社会の勉強に関連する音楽をプレゼンテーションしました。例えば、子ども達が学校でベートーヴェンを聴きながら感想文を書き、その感想文をプロのラッパーがオーケストラをバックに、文章をリズムよく語るコンサートです。大変盛り上がりました。

    日本の音楽教室でも、今の時代に合ったコンサートを作ってあげたいと強く思っています。人生初のオーケストラ体験となる子ども達には、一生忘れないコンサートになってもらいたいです。「お父さんお母さん、今日の演奏超楽しかった!楽器を演奏したい!」と言ってくれたら、音楽家としての役目を果たしたと思うし、ひとりの人生を音楽を通じて変えられたことに、幸せを感じます。

    もうひとつシンシナティ交響楽団で得たものは、ポップスとのコラボの大切さです。これまでに多くのポップス・アーティストとコラボしましたが、一生忘れないと思ったのは、アレサ・フランクリンとのコラボです。3万人超の野外コンサートで、彼女とオーケストラで演奏したそのエネルギーは、お客さんを大興奮させました。このお客さんが、オーケストラの定期会員になるとは思っていません。でも、音楽という魔法の可能性をすごく感じたときでした。

    日本はその人口に対して、クラシック音楽ファンがすごく少ないと思います。音楽自体のファンは多いです。でもそのほとんどが、ポップスだったりアイドルグループだったりではないでしょうか。僕もポップスは好きなのですが、本日ご来場の皆さま、配信をご覧の皆さまもご存じの通り、日本にはたくさんの素晴らしいクラシックの演奏家がいます。もっともっと、生演奏をこの日本の皆さんに聴いてもらいたいです。だからこそ、NHKのウインタースポーツテーマソングをNHK交響楽団の演奏とmiletさんの歌でコラボしたり、テレビ番組「題名のない音楽会」でのToshI さんとのコラボ・コンサートなど、より多くの音楽ファンにクラシックの世界を知ってもらう活動を続けていきたいです。

    これまでに海外で実施したプロジェクトを日本で実施しても、全てがうまくいくとは思っていません。ただ現在、東京交響楽団の正指揮者として様々なことにチャレンジができ、リスクを恐れなくてもよい環境におり、とても恵まれていると思っています。
    日本人指揮者として世界に向けて、自分は何をできるかを考えたときに、サントリーホールと東京交響楽団共催の「こども定期演奏会」での新曲プロジェクトを始めました。これは、子どもが作曲したメロディを若手作曲家が選び、5分の曲に作曲するものです。サントリーホールで世界初演をするだけでなく、12か月間その作曲家とマンツーマンでキャリア・ビルディングをしたり、その作曲家に次の依頼をするという一番大事な要素も含めたフル・パッケージで、プロジェクトの実施、プロモーションを行っています。第一回目の小田実結子さんは、昨年12月の世界初演の後、その次週にアメリカで初演、今後は山形交響楽団と東京交響楽団で演奏機会を得ています。このように、毎年一人の若手作曲家を前面にプッシュする活動を続けていきたいです。

    日本で音楽活動を続けるにあたり、自分がもっている全ての知識とクリエイティヴィティを常に改善して、音楽を通じて日本全国の皆さんの心がひとつになり、笑顔で音楽を楽しめる環境をつくりたいです。それが、マエストロ・マゼールの質問の答えに近づいているのではと思っています。

    今日はこの素晴らしい賞をいただくことによって、今自分がやっていることに勇気をいただきました。そして、自分の夢へ一歩前進をすることができました。
    関係者のみなさま、マネジメントチームのみなさま、ファンのみなさま、そして全てをサポートしてくれるファミリーに、この場を借りて、感謝をいたします。最高の誕生日プレゼントをありがとうございました。

プロフィール

  • 笹沼 樹

    笹沼 樹(チェロ)

    第65回ARDミュンヘン国際コンクール弦楽四重奏部門にて第3位、委嘱新作特別賞を受賞。2019年にはニューヨークのYoung Concert Artists International Auditionで弦楽四重奏として第1位を受賞。第65回全日本学生音楽コンクールチェロ部門高校の部第1位及び日本放送協会賞受賞。第12回東京音楽コンクール弦楽部門第2位。第83回日本音楽コンクールチェロ部門入選。室内楽奏者としても横浜国際音楽コンクール第1位並びにグランプリ、ルーマニア国際音楽コンクール第1位、ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2013第1位、松尾財団松尾音楽助成、霧島国際音楽祭賞、堤剛音楽監督賞、リゾナーレ室内楽セミナー奨励賞など受賞多数。
    Music Alp、北九州国際音楽祭、十勝音楽祭、赤穂 le pont 音楽祭、Melbourne Cello Festival、Piatigolsky International Cello Festival、宮崎国際音楽祭、別府アルゲリッチ音楽祭等に出演。2010年より霧島国際音楽祭に参加、霧島国際音楽祭賞、堤剛音楽監督賞を受賞。
    これまでにマルタ・アルゲリッチ、ミッシャ・マイスキー、マキシム・ヴェンゲーロフ、イヴリー・ギトリス、ダン・タイ・ソン、2CELLOS各氏らと共演。新日本フィルハーモニー交響楽団等と共演。
    カルテット・アマービレ、ラ・ルーチェ弦楽八重奏団のメンバー。
    桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)チェロ科を首席卒業。桐朋学園大学ソリストディプロマコース修了、並びに学習院大学文学部ドイツ語圏文化学科卒業。卒業時には学習院大学文化活動賞を受賞した。同校で2017年6月に天皇皇后両陛下をお迎えしての天覧公演となったリサイタルシリーズは毎年開催されている。2019年1月にはデビューCD『親愛の言葉』(日本コロムビア レコード芸術特選盤)をリリース。大きな話題となる。
    桐朋学園大学大学院修了。NHK交響楽団アカデミー生を修了。桐朋学園チェロアンサンブル・サイトウ奨学生、ヤマハ音楽奨学生、ロームミュージックファンデーション奨学生。CHANEL Pygmalion Daysアーティスト。
    チェロを、ヴァーツラフ・アダミーラ、古川展生の各氏に、現在堤剛氏に師事。使用楽器は 1771 年製 C.F.Landolfi(宗次コレクション)。
    オフィシャルホームページ https://www.sasanumatatsuki.com/

  • 原田 慶太楼

    原田 慶太楼(指揮)

    現在、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを中心に目覚しい活躍を続けている期待の俊英。
    シンシナティ交響楽団およびシンシナティ・ポップス・オーケストラ、アリゾナ・オペラ、リッチモンド交響楽団のアソシエイト・コンダクターを経て、2020年シーズンから、アメリカジョージア州サヴァンナ・フィルハーモニックの音楽&芸術監督に就任。
    ヒューストン、インディアナポリス、メンフィス、ルイジアナ、ウエストバージニア、ツーソン、フェニックス、ハワイ等のオーケストラと共演。国内でも様々なオーケストラと共演。
    オペラ指揮者としても実績が多く、アリゾナ・オペラのアシスタント・コンダクターとして、<ドン・パスクワーレ><連隊の娘><カルメン><トスカ>ほかの作品を手がけてきた。シンシナティ・オペラ、ブルガリア国立歌劇場、ノースカロライナ・オペラで活躍。国内ではフェニーチェ堺のオペラに登場。
    2010年タングルウッド音楽祭で小澤征爾フェロー賞、2013年ブルーノ・ワルター指揮者プレビュー賞、2014・2015・2016・2020・2021年米国ショルティ財団キャリア支援賞を受賞。第29回(2021年度) 渡邉曉雄音楽基金音楽賞受賞。
    1985年東京生まれ。インターロッケン芸術高校音楽科において、指揮をF.フェネルに師事。指揮法をロシアのサンクトペテルブルクで学び、2006年21歳のときにモスクワ交響楽団を指揮してデビュー。
    2009年、ロリン・マゼール主催の音楽祭「キャッソルトン・フェスティバル」にマゼール氏本人の招待を受けて参加。2010年には音楽監督ジェームズ・レヴァインの招聘を受けてタングルウッド音楽祭に参加、2011年には芸術監督ファビオ・ルイジの招聘によりPMFにも参加。これまでに、ロバート・スパノ、マイケル・ティルソン・トーマス、オリバー・ナッセン、ヘルベルト・ブロムシュテット、ステファン・アズベリーなどに師事。
    オーケストラやオペラのほか、室内楽、バレエ、ポップスやジャズ、そして教育的プログラムにも積極的に携わっている。
    2021年4月東京交響楽団正指揮者に就任。
    オフィシャルホームページ: kharada.com/ @KHconductor